《鏡色の研究》
アクリル,木材,日用品から最終した銀面のパッケージ
2015-
烏{マンセル色立体を模したオブジェ。スナック菓子の袋、即席ラーメンの袋、ボディソープの袋 など、日用品から採集した銀面 の彩度、明度を見極め、配置した。2012年からメランカオリは銀面の日用品の袋を集めているが、そのきっかけをこのように話していた。
この世から鏡が生まれる以前から、鏡的なものは存在したように、この世から鏡がなくなったとしても、鏡的なものは存在しつづけるだろう。そういった意味で、鏡は発明ではなく限りなく発見の産物だと言える。
あるとき、ポテトチップスの袋を開いたときに、 裏の銀面に図像が映り、その様子に見入ってしまった。それからというもの、日用品のパッケージの銀面を集めるようになった。収集していくうちに、それぞれの袋の銀色の違いが目につくようになり、反射する銀面の純度が異なることに気づいた。この銀面は私に鏡を想起させた。そして、この銀面の差異に気づくのは容易であるが、鏡の1つ1 つの差異というのは普段意識していなかったなと、 思ったのである。私は試しに、ポテトチップスの袋やペットフードの袋を用いて、鏡をつくってみた。 そしてそれを鏡として見つめた。スクライイングのような修練だった。 鏡に映ったものではなく鏡自体を見つめることは可能なのだろうか。そのような思いつきで、 鏡自体を見つめることや、鏡の質を見極める「利き鏡」なるゲームをひとりでに行っている。この作品について漠然と思うことがある。それは、例えば、 専門的に鏡の質を見極める職業があってもいいので はないかということである。そしてその職がもたらす効果は、現代においては限りなく乏しいかもしれ ないが、人間の歴史的に遠い目で見れば、ひょっとしたら一人の人間が天職を見つける過程の初期段階で出遇う予兆なのかもしれない。ちょうど、中世の錬金術師たちががアステカの黒耀石に天使の映像を見たように。 【2017年・ポートフォリオ】
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